どこかの誰かのダンスに役に立つことを願い、拙書「社交ダンスがもっと好きになる魔法の言葉」を公開中です。今回から、第3章「スタンダード・ダンスの悩みを解決する11の話」に入ります。今回はタンゴでシャープなプログレッシブ・リンクをする方法です。
MA28 第3章 スタンダード・ダンスの悩みを解決する11の話
(第6話)シャープなリンクをする方法
【質問】タンゴが大好きなのですが、プログレッシブ・リンクをシャープに踊る方法を教えてください。(女性)
女性のプログレッシブ・リンクを観察していると、1歩目で素早くPPになろうとする人が多いのが分かります。シャープなPPを演出しようとしているのだろうと思いますが、実はそこに落とし穴があります。
そこで、シャープさとは何かを考えてみましょう。
ひとつのアクションは時間をかけて行なうより、短い時間で行なう方がシャープに見えます――――そんなことは分かっていますよね。では、この原理をプログレッシブ・リンクに照らし合わせてみましょう。
リンクのカウント(QQ)の中にPPになるアクションが入っていますから、PPになるアクションを2つの(QQ)を使って行なうより、(Q)1つだけで行なう方がシャープさが増すことになります。
このことから、プログレッシブ・リンクは第2(Q)で行なうとシャープになることがお分かりいただけると思います。
「いえ、私は第1(Q)でシャープにやりたい。やります!」
と頑張っても、このフィガーそのものに(QQ)の長さがあるので、第1(Q)でシャープにしても、PPの形は第2(Q)まで繋がっているので、効果は薄れる結果となります。
また、第1(Q)でシャープにやると別の問題も発生します。実験で試してみましょう。次の二つの踊り方をしてみてください。
①1歩目にアクセントをつけて踊る。
②2歩目にアクセントをつけて踊る。
①の踊り方をすると、女性は男性の真正面に近いところで終わりませんでしたか?
一方、②の踊り方をすると、シャープに踊れるばかりか、男性の右腕の中にいられることも分かります。それが女性のやりたがっている理想の形です。これで半分以上、シャープなリンクができあがります。
従って、プログレッシブ・リンクでは、1歩目後退の右足より2歩目左足にアクセントをつけ、強くステップしてください。
追加説明ですが、1歩目は、フットワーク(BH)で後退の動きをします。でも、女性がヒールに乗るや否や2歩目の方向へのリードを受けるので、右足のヒールにどっかり乗ることはありません。
残る仕事はネックの返し方です。
PPになるとき、顔のどの辺を意識していますか? もし、顔の前面を回しているなら、それを「後頭部」に変えてみましょう。つまり、「顔」を回そうとするのではなく、「頭の後ろ」を回す気持ちです。意識している場所を変えてみるのです。
頭はひとつなので、どこを意識しようと同じと思うかもしれませんが、まるで違うアクションが起こりますから試してください。驚くほどシャープなプログレッシブ・リンクができあがります。
それでもなおシャープにならないときは――
①1歩目後退でバック・バランスになっていないかどうか、再度チェックしましょう。
②右手首、右肘の力を抜いてみましょう――――手首や肘を張っている方が男性のリードを完璧に体に伝えられるような気がしますが、力が入っている分、動きが悪くなります。
③グリップを右掌から「甲」に変えて練習してみましょう――――これは、②の手首・肘の力を抜くための優れた方法です。
④左を向いたまま踊ってみましょう――つまり、リンクの最後でもネックを返さず、左に置いておきます。ネックをPPに返すアクションが、自分がいるべきポジションから、ボディを自分の右手の方に持って行ってしまうことがありますが、それを回避できます。左を向いて、自分がいるべきポジションが理解できてからネックを返すようにすれば、素晴らしいPPができあがるでしょう。
プログレッシブ・リンクは
第2(Q)にアクセントをつけよう!
(「第3章 スタンダード・ダンスの悩みを解決する11の話
(第6話)シャープなリンクをする方法」おわり)
ハッピー・ダンシング!