#005 タンゴレッスン雑学5 静的表現とは?

投稿者: | 2020年1月5日

※ダンスビュー2016年12月号に掲載された記事「タンゴレッスン雑学3」に出て来た「静的表現」を少し詳しくお伝えします。

 

#005 タンゴレッスン雑学5
静的表現(モニュメンタル・スティルネス)とは?

 

先の投稿「タンゴレッスン雑学3」後半に、「以前は日本に素晴らしいダンサーがいた。リンクを終えた形が歌舞伎役者のようでとても素晴らしかったと、その“静的”表現を称えていた」と、ビル・アービンについて書きましたが、今回はその静的表現のお話です。

 

最初に2017年ダンスファン6月号のJCDコングレスレポートを紹介しましょう。

 

Marcus Hilton (MBE)
ボールルームは正しい道を歩んでいる

 

「ボールルーム・ダンスの流れは未来の美しいダンスに向かい、正しい道を歩んでいると思います。タンゴでは歩く、脚部でとるタイミング、ローテーションなどのベーシック・アクションが戻りうれしく思います。それこそが本来のタンゴです。私の好きなカウントの取り方は(1&2&~)で、1はレッグのアクション、&はボディのアクションです。1ですぐにボディを乗せません。

 

10~15年ほど前から音楽性を重要視し、常に2小節、4小節、あるいは、8小節構成のフレージングで踊るようになりましたが、その重要性がある一方、アクションやダンスの特性を忘れてしまいます。(その特性のひとつとして)ビルから ”Monumental Stillness” (胸像のような静けさ)の表現を聞いたことがあります」。

 

 

マーカスさんが2008年に語った「懸念」は、ここでは「正しい道を歩んでいる」に変化していますが、それはさておき(笑)、彼はコングレスの中で、この ”Monumental Stillness” の言葉を一度だけ使いました。実際にはこう話しました。

 

「彼(ビル)がどこでこの言葉を知ったか知りませんが、たぶん日本だと思います。忘れもしません、その言葉は”Monumental Stillness”です」

 

それを私は「静的表現」と通訳しながら、「”Monumental Stillness” の補足説明が欲しい」と思い続けていましたが、それ以上の説明は一切ありませんでした。しかし、このコングレスにおける一人の持ち時間は45分、通訳を介すとその半分程度の長さしか話せないので、この一言には、それなりの重要性があったに違いありません。

 

Monumental Stillness” を聞いた瞬間、かつて見たビデオを思い出していました。それがこの「ビル・アービンのモダン・レクチャー」(スタジオひまわり/1991年収録)です。その中で、アービン氏は語ります。

 

Bill Irvine

 

「ここでステップ・トゥ・ポーズ(Step to Pause/ステップしたら動きを止める動作)の原則について説明します。

 

たとえばプロムナードをするとき、(1歩目をステップし、両足が開いた形で止まり)わたしはモニュメンタル・スティルネスを感じます。

 

そこから両足を閉じたときにも、そのスティルネスをボディの中に感じています。(中略)――もしかすると、ある人の目にはオールド・ファッションと映るかもしれません。なぜなら、これは私たちが若かった頃に練習した方法だからです。しかし、いまでもタンゴを完璧なものに見せてくれます」。

 

 

次に足の使い方を説明し、彼が1960年代に英国で見た日本人の話に移ります。

 

「当時のタンゴのコリオグラフィーは今とは全然違います。日本人カップルたちはスムーズなフォックストロットができませんでしたし、快活にスイングするワルツも踊れませんでした。でも、彼らは皆、非常に静かで、強く美しいタンゴを踊っていました。そのときに見たプロムナードの形は、今まで見た中で最も素晴らしいものの一つです。タンゴはある意味、日本の歌舞伎の表現法と通じるものがあると思います」。

(上は歌舞伎の雰囲気を取るアービン氏。ビデオから切り抜きました)

 

プロのスタンダード・ダンサーたちには当たり前になっている表現かも知れませんが、このブログを読んで下さっているサークルだけで踊っている人たちにも役立つと思い、書き出してみました。楽しんで下さったなら、うれしいです。

ということで……ハッピー・ダンシング!