MT21 第4章 心のあり方

投稿者: | 2020年3月1日

「ダンサーのためのメンタル・トレーニング」(マッシモ・ジョルジアンニ著/神元誠・久子翻訳/白夜書房 原書名:DANCING BEYOND THE PHYSICALITY)を紹介します。

■目次

 

MT21 第4章 心のあり方
State of Mind

 

健康も病気も、幸せも悲しみも、金持ちも貧乏も、

それは心のあり方次第なのだ。

(エドマンド・スペンサー*)

■ エドマンド・スペンサー(Edmund Spenser):1552-1599。英国の詩人。

 

私にもあったように、あなたたちにも競技会でものすごく調子が良いと思った経験があると思います。そうしたときのように、自分が素晴らしく思えているときには、脳は非常に顕在化した状態にあり、あらゆることが成就されやすくなっています。そのような状態のときは、踊り始める前から、きっとうまく美しく踊れる、との自信が感じられます。

 

その一方で皆さんも、私と同じこのような経験があるのではないでしょうか? すなわち、うまく踊れそうもない気持ちでいっぱいの中で踊ってみると、やはり良い結果が得られなかったことが。体は思ったように動かず、否定的な考えに埋もれ、バランスを崩し、スペースに飛び込んで行くにも優柔不断で、ポスチャーは小さくなり、声はこもり、目はうつろになってしまったことが…。

 

そうした状態のときは、あたかも自分の体が切り離された別物に感じられます。見ている側には、あなたがそこで踊っていることすら感じられない、俗に言う、調子の悪い日なのです。

そこで、私が自問するのは、「なぜ、そうした違いがあるのか」ということです。私とあなたに違いはありませんから、あなたにもこの質問を自分に投げかけてみて欲しいのです。

 

私の場合は幸いなことに、その答えが見つかりました。違いは心の中でした。即ち、そのときの、自分の精神状態に原因があったのです。その心の状態は次のような三つの要素から決定づけられます。

 

・生理的状態

・内なる描写*

・自分との対話

 

そして、心の状態は行動、すなわち、外に現われる姿勢、身振り、行動などに大きな影響を与えるので、その人の態度を見ると心の状態が分かる程です。

 

私たちの体の肉体的状態と精神的状態は、下記の二つの相反する幅の間で揺れ動いています。

 

・ 力を与える方向: 安心感、一体感、自分を信用すること、団結、ふざけたり楽しんだりすることなどから得られる積極的な心の状態です。

・ 力を奪う方向: 恐れ、パニック、退屈、落胆、あるいは、当惑などの要因を伴う、否定的な心の状態です。

 

誰もがこうした否定的な状態や肯定的な状態になりますし、一日のうちで何回と繰り返すこともありますから、読者の皆さんも自身の経験から、そうした精神状態が行動に影響していることは分かっていると思います。

 

― 技術面での準備だけでは不十分です。その試合、そのイベントに向けて最適な心の状態を作れるよう、万全を期さなくてはなりません。技術面と精神面での両面が同じように成長しなくてはなりません。いい技術を持っていても、自分の感情をコントロールできない人を想像してごらんなさい。その人の演技はどんなふうになると思いますか? 

 

の反対に、感情面では申し分なくても、技術がそのレベルに達していないダンサーというケースもあります。あなたも、そうした二つのタイプのダンサーを見たことがあると思いますが、どちらかというと、感情面がきちんとしている人たちの方が良い成績を出していると思いませんか?

 

そうしたことが分かったので、私は、ダンサーが目標に達成するには、前述の二つの要素のうち、どちらも欠けてはならないと強く思うようになりました。与えられた環境下で自分はどうあるべきか、そして、どう感じるべきか、それを理解することが第一です。それができると、物事を目標到達に有益な方向へと変えていくことができるからです。

 

― 心のあり方は、行動にも内なる描写* にも影響を与えます。

― 心のあり方には、力を与えるものと力を奪うものがあります。

― 誰もが心の中で、否定的な状態と肯定的な状態の間を行き来しています。

 

■ 内なる描写 :原文は Inner Representation で、これは哲学・心理学分野では「内部表象」と訳されていますが、「表象」は難解な感じがしたので、本書ではあえて「内なる描写(心に描くこと)」と訳しました。


「MT21 第4章 心のあり方」

 

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