MA58 紳士・淑女たれ!

投稿者: | 2020年2月11日

どこかの誰かのダンスに役に立つことを願い、拙書「社交ダンスがもっと好きになる魔法の言葉」を公開中。今回は最終章「知って得するあんな話こんな話10話」です。

 

MA58 第6章 知って得するあんな話こんな話10話
(第5話)紳士・淑女たれ!

 

 

社交ダンスは紳士・淑女の踊りと言われていますが、本当にそうでしょうか? 

 

サルサで話した女性がこんな話をしてくれました。

「女性もすごく気を遣うのよ。上手く踊れないときに、『ちっ、そこはターンするところなんだよな』と、小声で文句を言う男性がいるの」。

 

社交ダンスのフリー・パーティーでも、「右肘張って、もっと押し返して!」などと、いろいろ注文してくる男性がいるようです。個人レッスンで教えているならともかく、クラブとかパーティーで踊っているのに相手に注文するなんて、実に失礼です。男は女に優しくなくちゃ。

 

一方、女性でも大変失礼な人がいます。

初めて踊った年配女性に、「もっと強くリードしなさいよ!」と怒鳴られ、とても驚いたことがあります。踊らせてもらうのが当たり前と思っているのでしょうか?

誘いを断るとき、口も開かず、目の前の蠅を払うようなしぐさで断る大変失礼な人もいます。実に美しくない。女も男に優しくなくちゃ。

●そんなに必死にならないで、
●そんなにツンツンしてないで、
●もっと音楽と踊りを楽しもうよ。
●もっと二人の間の時間と空間を楽しもうよ。

 

マナーとかは難しい問題だし、知らずに傷つけることもあるけれど、「相手が楽しいかな?」と考えるだけで、少しは違ってくる気がします。ところがこうした問題は趣味で踊る人たちに限らず、競技選手の中にも見られます。中でも、次の二つは大きな問題だと思います。

 

●1つは、スタンダードで逆LODへの暴走。

以前、ブラックプールで観戦していたとき、短い方のLODをほとんど逆走したカップルがいました。この問題は、世界のトップ・プロたちから正さなくてはならないと思っています。これを許容すると、どんどんひどくなりますから、ジャッジは長い距離を逆走する選手には、例え世界チャンピオンであってもマークを入れない、としなくてはいけないと思います。

 

●もうひとつは、他のカップルとぶつかったときの対処法です。社交ダンスでは「お互いに謝るのがマナー」などと話していますが、競技選手の中には知らない顔をする人が多い多い気がします。

私が目撃した一番酷いのは、ある世界的なダンサーが、クイックステップで止まっているカップルにぶつかって行ったにも関わらず謝りませんでした。それどころか、相手の見えないところで笑ったのです。

これはショックでした。いくら戦っていようとも自分からぶつかったなら、立ち止まって謝るのがマナーです。勝つためには、ぶつかっていこうが他の人がどうなろうが構わないという姿勢は、紳士・淑女の規範から大きく外れていると思います。競技会に出ている人たちこそ、社交ダンスのお手本にならなければいけないと思います。

 

 

実は競技会は魔物――――私はそう考えています。

 

踊り手は「競技」と「勝敗」をエサに、人としての本性を試されていると思わなくてはなりません。例え、競技会で良い成績を残しても、競技生活を終えてからの人生の方がずっと長く続くのですから・・・・・・。

 

ずいぶん昔になりますが、武道館で行われた競技会で、オーストラリアから参加した選手(名前はまったく思い出せませんが口髭を生やしていました)が、実に素晴らしいトップ・クラスの踊りをしつつ、非常に美しいマナーで、品のよい踊りをしていたのが目に焼き付いています。

 

競技会は魔物。その人の人間性を試しています。
くれぐれも、ばれないようにしましょう(笑)。

(「第6章 知って得するあんな話こんな話10話
(第5話)紳士・淑女たれ!」おわり)

 

ハッピー・ダンシング!