MBD 23.ジャイブ

投稿者: | 2020年2月6日

ビクター・シルベスターのモダン・ボールルーム・ダンシングから「23.ジャイブ」をお届けします。

第二章 実習
23.ジャイブ(またはアメリカン・スイング)
Jive (or American Swing)

 

ジャイブを習いたい初心者には、ロックンロールの章はとても良い準備となります。二つの踊りの大きな違いは、ロックンロールでシングル・リズムの所をジャイブではトリプル・リズムと呼ばれる踊り方をしている点です。

 

●音楽
4/4拍子。2種類の基本リズムがあります。

(1) 1小節の中に2歩のQQとジャイブ・シャッセ(トリプルリズム)が1セット(QaQ)
(2) 1小節半の中に2歩のQQとジャイブのシャッセが2セット(QaQ、QaQ)

こうしたリズムは、シングル・ビート(QQ)のステップでは「1,2」、シャッセの所では「3と4」と声に出すのが一番良いでしょう。当然、これは音楽的に正しい事ではありません。「1,2、3と4,3と4」と言った場合、あたかも1小節に2回のシャッセ含まれているかのように感じられますが、それは明らかに間違いです。3拍目も4拍目も各小節には1回ずつしかないからです。2回目の「3と4」は次の小節に入るものです。しかしながら、この様にカウントするのは生徒にも先生にも大変便利だという事が長年の経験が実証しています。下に掲げる音の長さとカウントについて勉強すると理解できるようになる事でしょう。

 

もうひとつ「ダブル・リズム」あるいは「ツー・ビート・ジャイブ」と呼ばれるものがあり、トリプル・リズムに使われている3歩を‘QQ’ とか‛3,4’と数える‘タップ‐ステップ’に置き換えるものです。

この場合、カウント3では体重の一部を、カウント4では全体重を乗せ、ジャイブ・シャッセの‘a’のカウントの動きが完全に省かれています。このダブル・リズムも魅力的ですが、トリプル・リズムで踊る通常のジャイブでは、時折リズムに変化をもたらす場合のみ使われるべきでしょう。ダブル・リズムの多用は、だらけた印象や音楽的表現が貧しい印象を与えてしまうので、これから出てくるすべてのフィガーはトリプル・リズムを使っています。また、このトリプル・リズムは英国ダンス評議会の下に開催される競技会やメダルテストに、おおよそ1分間に44小節の速さで使われているものです。この速さは、勿論、早くなることもあれば遅くなる事もあります。

 

 

●ホールド
サンバのホールドに似ていますが、もっと緩んで柔軟性に富んでいます。両腕は少し低めに保ちます。この形はノーマル・ホールドとして表現してあります。ジャイブで頻繁に使われるオープン・ホールドとは、男性が左手で女性の右手を取って離れた所に位置した形です。腕は腰より少し高めに置き、肘は伸ばしきりません。

 

●リード
リードのほとんどは男性の腕のテンションから伝わり、それを感じるべく、女性は腕の筋肉で抵抗して対応します。女性がこの様な方法を取らなければ、男性がアメリカン・スピンのようなフィガーのリードをする事は不可能になります。ですから女性は、男性がリードしようとするとき、決して緩んだ腕をしていてはいけない事を覚えておいてください。

 

●ジャイブ・シャッセ
3歩から成り立ち、前進、後退、横(左右へ)そして、回転(左右の)等があります。シャッセでは「3と4」のようにカウントし、「と」の足は「3」の足に半分ほど寄せ、決して揃えません。実際の動きは、とても歩幅を小さく使います。

 

●フットワーク
すべてのステップはボールから出、ヒールは床から少し離れているか軽く触れる程度です。ボディ・ウェイトは前傾気味に保ち、決してヒールにおりる程後ろに持って行きません。膝は自然に緩めておきます。腰は自由に動くようにしておき、体重が足に乗ったとき、腰が僅かに横に上がるのを感じるようにします。ベーシック・ムーブメントでもそうですが、ジャイブ・シャッセを横に踊った場合は特にそうです。前進のステップでヒールから出る事はありませんが、女性が上級ジャイブ‘スタイル’として使う事があります。

 

●アラインメント、または、ダイレクション
ジャイブではフロアの周りを進んでいく事はありませんので(ウォークは別)、どの方向を向いて踊り始めても構いません。

様々な形の音楽がジャイブに適しているため、その音楽解釈は個々のダンサーによって変化します。そのため、これから出てくるフィガーの説明では、足の置く位置や回転量はおおよそのものと理解してください。ジャイブを踊る人が「と(ア)」のカウントにアクセントを置く事は決してありません。そこにアクセントを置くと踊りが忙しく、ギクシャクして見えるからです。演奏される音楽に合わせ、別の所にアクセントをつけるようにします。

 

 

■ステップの説明を読みましょう。以下のステップが出ています。

  • ベーシック・ムーブメント
  • ロック・ベーシック
  • ベーシック・ムーブメント・イン・フォーラウェイ
  • ベーシック・スローアウェイ
  • プロムナード・ウォークス
  • 右から左へのチェンジ・オブ・プレイスィズ
  • 左から右へのチェンジ・オブ・プレイスィズ
  • チェンジ・オブ・ハンズの入った右から左、左から右へのチェンジ・オブ・プレイスィズ
  • リンク
  • ウィップ
  • チェンジ・オブ・ハンズ・ビハインド・バック
  • アメリカン・スピン

 

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(この項おわり)


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「モダン・ボールルーム・ダンシング」
(ビクター・シルベスター著/神元誠・久子翻訳/白夜書房)
2005年12月出版
原書名:Modern Ballroom Dancing (Victor Silvester)

 

 

世界で60万部以上の販売実績を誇る、ボールルーム・ダンス本のトップセラー。1922年の第1回世界プロフェッショナル・ボールルーム・ダンス選手権のチャンピオン、ビクター・シルベスターがダンスの歴史を遡り、スタンダード・ダンスの起源と発達を語る。実習編では、初心者にも適した踊りから上級者向けまで詳しく解説。

 

ビクター・シルベスターは楽団を率いていたことでも有名ですし、同様に、ストリクト・テンポを確立した人としても名が知れ渡っています。私がダンスを始めた時にも、イギリスからビクター・シルベスター・グランド・オーケストラのLPを何枚も買い求めていましたので、そのように著名で偉大な人が書かれた本の翻訳をさせて頂く機会を得たことは、この上なく光栄でした。

 

神元誠・久子