MBD 10.ソシアル・ダンス スローとクイックのリズム

投稿者: | 2020年2月5日

ビクター・シルベスターのモダン・ボールルーム・ダンシングから「10.ソシアル・ダンス スローとクイックのリズム」をお届けします。

第二章 実習
10.ソシアル・ダンス
スローとクイックのリズム
Social Dancing: Slow and Quick Rhythm

 

スロー・リズムとクイック・リズムとは、緩やかなテンポや速いテンポの曲で踊るリズム・ダンスのことで、フォックストロットやクイックステップの曲に合わせ、混雑した所で踊る踊り方です。規格化されたフォックストロットやクイックステップでは厳密なテンポが要求されますが、リズム・ダンスは 4/4 拍子(1小節に4拍)ならどんな音楽でも踊る事ができます。

 

クイ ック・リズムは、約40小節 分より早いテンポの音楽で踊る事ができますし、それより遅いテンポの場合にはスロー・リズムを踊ります。 4/4 拍子の音楽では1拍目と3拍目にアクセントがあり、少し練習をすれば初心者でも音を取れるようになります。

 

フィガーを覚え易くするため、先生は拍子をスローとクイックに置き換えて教え、生徒は、スローは2拍、クイックは1拍と簡単に覚えましょう。ひとつのスローにはクイックふたつ分の長さが、ひとつのクイックにはスローの半分の長さがあります。私は生徒達が、「スロー」と言いつつ「クイック」の速さ でステップする傾向があるのを見てきました。こうした傾向の初心者には「スロー」の代わりに「スローリー」( ゆっくりと の意味)と言わせると良いでしょう。言葉が長い分、ステップするのも少し遅くなるからです。

 

 

●ホールド

スロー・リズムでもクイック・リズムでも同じです。男性は右手を女性の左肩甲骨の少し下に置き(すごく混雑しているフロア では更に深く彼女の背中に手を回します)、指は閉じ、手のひらは女性の背中に合わせて自然なカーブを持たせます。左手は肩の位置より少し高くし、肘のところで前腕を曲げ、自然でゆったりと見え るようにします。左手で女性の右手を取り、手のひらを合わせて親指を重ねます。両肘を僅かに上げますが、肩は上がらないようにしましょう。

女性は男性の正面にできる限り真っ直ぐに組みますが、すごく混雑女性は男性の正面にできる限り真っ直ぐに組みますが、すごく混雑しているフロアでは男性は更に深く彼女の背中に手を回し、女性はでは男性は更に深く彼女の背中に手を回し、女性は男性の右に寄ることになります。女性の右腕は男性の左腕の高さに合わせ、右手は先に述べたようにして男性の左手と組みます。左手は男性の上腕に軽くおきますが、指は開かず、肘は少し上げてぶらは男性の上腕に軽くおきますが、指は開かず、肘は少し上げてぶら下がったり、重みをかけたりしないようにします。

スローカウントの前進と後退は歩くようにステップします。したがってビギナーの人は、フィガーを覚える前に正しく歩く練習をするのはとても良い運動に成りますし、バランスもよくなります。フィガーをマスターした後も「歩く」練習をすることをお薦めします。

 

 

● 前進ウォーク

自然に歩くときの動きが元になっています。少しだけ違う所は、自然に歩くときは少し足を持ち上げて前に踏み出しますが、ダンスでは足が床の上を軽くかすめていきます。出て行く足(ムービング・フット)は初めに足のボール部分が床に触れながら出て行き、もう一方の足のトウを通過するときにヒールへ変わ ります。この時点で軸足のヒールが床から離れ始めます。ムービング・フットのヒールは必要な歩幅になるまで出て行き、その間後ろ足は徐々にボールからトウになっていきます。最後に前足のトウが床に着き、後足を引き寄せてきますが、この時の後ろ足はトウからボールになり、次のステップの用意ができます。両足は真っ直ぐに出すことを覚えて置いてください。内股にも外股にもしないことです。

スロー・リズムでの歩幅は歩くときと同じでよいですが、混雑したフロアでは小さくして下さい。クイック・リズムでは歩幅を小さくし、音楽が通常よりかなり速い テンポの場合は、さらに小さくします。

 

 

●後退ウォーク

前進と同じく自然に歩く動きが元になっています。後退しようとするムービング・フットはボールから後退し、一度トウになってから再びボールになります。この時点で前方に位置する軸足のトウが少し上がり、ヒールを床に押し付けながら引き寄せてきます。後退の歩幅は前進のときと同じように調整します。

ウォークの一歩は“スロー”カウントで2拍の長さがあります。よって、スローふたつで1小節になります(1小節は4拍あるので)。

 

MEMO:
横方向へのステップはボールから床につき、それからその足に体重が移動しながらヒールがおります。

 

 

● スローとクイック・リズムダンスの違い

スロー・リズム用に書き出したフィガーは、サイド・ステップを除きクイック・リズムダンスで踊る事ができます。このサイド・ステップにはクイック・カウントが6個あり、クイック・リズムの音楽で踊るには忙し過ぎて不向きなのです。トゥインクルの踊り方も変わります。クイック・リズムで踊るには全部をスロー・カウントにする方が早い音楽に合い、より魅力的になります。

スロー・リズムで足を閉じるとき、両足がきちっと揃うようにしまうにします。しかしクイック・リズムのクイック・カウントで足を閉じるときは、両足をきっちり揃えるのではなく、大方揃っていれば良く、スロー・カウントのときにきちっと揃えます。スロー・リズムの踊りの方がクイック・リズムよりわずかに歩幅が大きくなります。大きくなります。

 

 

● リズムダンスにおけるボディ・スウェイ

ボディ・スウェイは踊る人のスタイルを作り上げたり、あるいは、様々な動きに柔らかさを与えてくれたりしますが、ビギナーの人たちはある程度のレベルに達し、色々なフィガーが踊れるようになるまで試みようとしてはいけません。右足でステップするときにはヒップから右側にわずかなスウェイが、左足でステップするときにはヒップから左側にわずかなスウェイがかかります。簡単に言えば、ステップする足の方向にスウェイがわずかにかかります。

 

 

■ステップの説明頁を読みましょう。以下のステップが出ています。

  • クオーター・ターンズ
  • ナチュラル・ピボット・ターン
  • リバース・ピボット・ターン
  • リバース・ピボット・ターンからのロータリー・シャッセ
  • バック・コルテ
  • ダブルシャッセ・バック・コルテ
  • シャッセ・リバース・ターン
  • シックス・クイック・サイド・ステップ
  • トゥインクル(スロー・リズム)
  • トゥインクル(クイック・リズム)
  • サイド・ステップ(クイック・リズム)

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(この項おわり)


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「モダン・ボールルーム・ダンシング」
(ビクター・シルベスター著/神元誠・久子翻訳/白夜書房)
2005年12月出版
原書名:Modern Ballroom Dancing (Victor Silvester)

 

 

世界で60万部以上の販売実績を誇る、ボールルーム・ダンス本のトップセラー。1922年の第1回世界プロフェッショナル・ボールルーム・ダンス選手権のチャンピオン、ビクター・シルベスターがダンスの歴史を遡り、スタンダード・ダンスの起源と発達を語る。実習編では、初心者にも適した踊りから上級者向けまで詳しく解説。

 

ビクター・シルベスターは楽団を率いていたことでも有名ですし、同様に、ストリクト・テンポを確立した人としても名が知れ渡っています。私がダンスを始めた時にも、イギリスからビクター・シルベスター・グランド・オーケストラのLPを何枚も買い求めていましたので、そのように著名で偉大な人が書かれた本の翻訳をさせて頂く機会を得たことは、この上なく光栄でした。

 

神元誠・久子