AT14 当てにならない感覚

投稿者: | 2020年1月31日

今回紹介する内容は「原理7.私たちの運動感覚は体内で調整される」ですが、私は自分の体験から(当てにならない感覚)の副題をつけてみました。どの位当てにならなかったかは最後に紹介しています。

 

私とダンスとアレクサンダー・テクニークと
AT14 当てにならない感覚

 

初めに7つの原理を抑えておきましょう。

ボディ・チャンスの7つの原理

1. すべての動きは相互依存の関係にある。
2. 有害な動きは概ね知らないうちに行われている。
3. 動きは健康や精神状態に大きな影響を及ぼす。
4. 頭部の動きは脊椎運動を支配する。
5. 動きは古い感覚に支配されている。新しい考えで動くことはまれである。
6. 動きは緊張を減らすことで変わる。増やしてではない。
7. 私たちの運動感覚は体内で調整される。


ダンス――遥かにうまくなるための秘訣(2回目記事より)


 

原理7.私たちの運動感覚は体内で調整される

 

1.目を閉じ、両足を開いて内側が平行になるようにします(これは太極拳でも行われています)。

2.次に目を開けて見てみましょう。両足は平行でしょうか?

 

多くの場合、両足が僅かに外に開いています。外に開くのは自然なことで別段問題ではありませんが、感覚とは、自分が正しいと思っているだけで、絶対的ではないということをこの実験は示しています。

 

感覚は相対的であり絶対的ではありません。誰もが同じ感覚を持つ訳ではなく、ある人に対し好感を抱く人もいれば、不快感を抱く人もいるでしょう。同一物にさえ、感覚は人により異なる ―― この考えは新しいものではありません。

では、同様のことが目に見えない内側の世界に対してもあるのでしょうか? 例えば、あなたが真っすぐに立っていると思う感覚が劇的に違うということがあるのでしょうか?

 

ダンスのクラスで先生が皆さんに「真っすぐ立って」と言ったら、何が起こるでしょう? クラスに17名いたなら17通りの「真っすぐ」が出来ることでしょう(いずれにせよ、あなたの背中は曲線を描いているのですから真っすぐにはなり得ません)。

 

先生は一人一人を回り、手を使って皆さんを真っすぐに「直して」くれることでしょうが、多くの場合、その行為にはテンションが加わりますから、皆さんは今より体の柔軟性をなくし、もっと固くなって「真っすぐ立つ」努力をすることになるでしょう。

でも、ダンスが上手くなるために、あなたは体を一所懸命に固めたいでしょうか?

 

以上で、人間の動きを理解する新しい7つの原理を見てきました。これは生涯続けて研究できることで、あなたに大きな喜び、大いなる洞察力、そしていつまでも健康でいられる人生を与えてくれることでしょう。これはあなたがしている別のことにも役立つことでしょう。

 

アレクサンダーの発見は、コペルニクスが地球が太陽の周りを回っていることを発見したのと同じようなものです。単に、彼以前の人が誰も気づかなかった、自然が設計した人間の動きを説明したに過ぎません。

では、アレクサンダー・テクニークで何を学ぶか、その説明は少し困難です。決められた内容や順番がある訳ではないからです。敢えて説明するなら、自分自身について学ぶ作業をすると言えるでしょう。

 

次回は、私たちがムーブメントやポスチャー、あるいは苦痛をどうにかしようと思ったときに起こす、7つの古典的な誤りについてお話ししましょう。勿論、社交ダンスに関連づけてお話しすることもできますので、ダンス上達のためにお知りになりたいことがあれば、こちらまでご質問をお寄せください。一人一人にお返事することはできませんが、多い質問についてはこの記事の中で取り上げるように致します。

(「ダンス――遥かに上手くなるための秘訣」第2回記事から)

 

 

 

 

ジェレミーさんの足を揃えるテストをしてみましたか? 驚いた人も多かったと思います。

私はこの記事に出合う10年前に同じ経験をし、自分の感覚が当てにならないことを痛感したことがあります。その時の話を拙書「パーティーはおまかせ」の中でも書きましたが、どのレベルの熱心なダンサーにもきっと役立つと思いますので、その中から一部抜粋します。「スローアウェイ・オーバースウェイが上手くできない」とか「いつもあそこで崩れてしまう」のような悩みが出るのも、見た通り、考えた通りに「やっている積り」なのにそうじゃないのは、自分の感覚に「当てにならない部分」があるからなのでしょうね。

 

 ―― 引用 ――

感覚と視覚

ブルースに限らずスタンダードの前進では、基本的に「トウを進行方向に向けて真っすぐ」出しましょう。でもこの話は当たり前過ぎて「役に立つアドバイス」と考えない人が多いかも知れません。

 

自分の足に裏切られた私?

 

2000年夏。当時教えていたサークル主催のパーティーにマーカス&カレン・ヒルトンMBEをお招きしたことがあります。そして、デモの前にワルツのワンポイント・アドバイスをお願いしました。すると、マーカスさんから出たアドバイスは「両足をまっすぐ揃える」でした。

 

「あ~あ……、ワンポイント・アドバイスには別途お支払もしたのに、こんな分かり切ったことかぁ……。経験者にも役に立つアドバイスが欲しかったなぁ……」

 

ところが、ふと自分の足元を見て私はひっくり返るくらい驚きました! 

なんと、きちんと爪先を揃えていた筈の右つま先が少し外を向いているではありませんか! 

 

「こ、この裏切り者!!」と思ったわけではありませんが、誰にも見られないようそっと足を揃えたのは言うまでもありません。

 

考えてみれば世界チャンピオンが「これが大事」と教えて下さるのですから、それがどんなことであろうと、それだけ重要なことなのですね。

 

 ―― 引用終わり ―― 

 

 

第2回記事をPDFで!

2回目の記事も興味深く読まれたことと思います。新しい発見を感じながら読んでくださっている人が一人でもいるとうれしいです。

  • Dance Wing Vol. 52に掲載されたこの記事をPDFで通して読むことができます。
  • 英語の原文も紹介しています。読まれる方はPDF最後のページから逆読みしてください。
  • English text is also available in PDF attached herewith. Read from the last page in reverse way.

 

(つづく)

 


「私とダンスとアレクサンダー・テクニークと」目次

 

📌BODY CHANCE – アレクサンダー・テクニーク