#002 タンゴレッスン雑学2 マーカスさんはどう捉えていたか

投稿者: | 2020年1月5日

※ダンスビュー2016年12月号に掲載された記事「タンゴレッスン雑学」を更に詳しく書き直して紹介します。第2弾はMarcus Hiltonさんのお話です。

 

#002 タンゴレッスン雑学2
マーカスさんはタンゴをどう捉えていたか

 

最初に、ダンスビュウに提出した原稿のままを書き出しましょう。


 

マーカスさんはタンゴをどう捉えていたか

 

マーカスさんはレクチャーの中で、真顔で話しました。

「僕はユーモアいっぱいの性格なので、タンゴの特徴を出すのは至難の業でした。自分たちのタンゴが世界一だと納得させるのに、とても苦労しました」。

 

「うれしくなる」というと、人柄がわかってしまいますが、どこかホッとする自分を隠し切ることができません。こんな偉大なチャンピオンたちでさえ悩んでいたのですから! こうした話を知って、「悩み」が「やる気」に変わった人がいたなら、別の意味でうれしいことです。

レクチャー動画より

 

そのマーカスさんが苦労して会得したこととは――

①音楽のタイミングは足で取り、それからボディを移動。スイング・ダンスではボディでタイミングを取るけれど。

②特徴付けには、音楽が何を伝えているかを最初に考える。

③個人的には、足の後ろにバランスを感じて立つことは絶対しない。

 

実は、マーカスさんはこのレクチャーの中で、「最近のダンス界では、種目ごとの特徴が失われつつあるように思え、残念です」とも話していました。分かる気がします…。といっても、私の場合は単に年のせいなのでしょうが、タンゴの映像を、音を消して見ると、あまりにも、 クイック・カウントやシンコペーションの連続で、クイックステップと勘違いする瞬間があるのです。

 

もはや、タンゴらしさを感じさせる古典的なウォークスやクローズド・プロムナードは流行らないのでしょうか?

 


 

この記事に使用したのは、”Happy Training Italy 2008”(スタジオひまわり)のDVD。

 

このHappy Trainingは、イタリアのアブラート&カテリーナ・アルゼントン氏が主催し、世界的なコーチャーを幾人も招いて行なうトレーニング・キャンプです。ダンスビュウ記事では誌面の制限から上のようにまとめましたが、このブログでは、より少し詳しく、彼が参加者に語り掛けた言葉で紹介しましょう。

●最初に、タンゴは他のスイング・ダンスと別物と考えましょう。

●スイング・ダンスで音楽を聴くように、タンゴでも音楽を聴きますが、タンゴでは脚部のタイミングを音楽に乗せます。タイミングは足で取り、それからボディを移動します。

●スイング・ダンスではボディでタイミングを取ります。フォックストロットでもヴィーニーズワルツでもクイックステップでも脚部はボディにフォローし、ボディが音楽に乗って踊ります。

●タンゴでの脚部は獲物を探すように移動します。

●タンゴのキャラクター作りで最初に考えなければならないのは音楽。音楽が何を伝えてくれるのか? 情熱、激情、緩慢さ、美、純粋さ、ロマンス、愛情、様々な感情を伝えてきます。

●私がまだ小さい頃、ダンスの先生からよく「マーカス、タンゴでは低くなって、膝を曲げて踊りなさい! 出来るだけ低くなって踊りなさい」と言われました。こんな風に低くなっても、それでも肩を押されて「もっと低く」、と言われたものです。それが正しいはずありません。

●低くなるというのとウエイトを下ろすというのを、意味を取り違えてしまったのです。

●タンゴでは、足の全体にバランスを乗せています。足をタンゴ・ポジションにすると、重心が低くなり、ウエイトが足と関連して正しいポジションに配分されます。でも、バランスは変わりません。バランスは前方のままです。個人的に絶対しないこと、また、誰を教えるかにもよりますが、バランスを足の後ろに感じて立つことはしません。

●私の選手生活後半のコーチャー達は、「SIT DOWN」しないで「SIT UP」しなさい」と言いました。
(※この「SIT UP」の表現は、映像を見ないと分かりにくいですが、これは、カフェなどにある高椅子にお尻をちょいと乗せる感じです)。

 

マーカスさんのお話、楽しんでいただけましたか?

 

ハッピー・ダンシング!